『大正イマジュリイの世界』展
八月の半ば、佐倉市立美術館を訪れた。
『儚く、妖しく、美しく── 大正イマジュリイの世界』
このキャッチコピーがすべてを物語っているかのような、大正ロマン的感性に惹かれてやまない。思えば泉鏡花も大正時代の文豪であり、このときも全集を一冊持参していた。
まず建築の美しさにおどろかされた。大正時代に建てられた銀行を活かしたレトロな佇まい。ここまで京成佐倉駅から上り坂を歩いてきた暑さも忘れてしまった。
展覧会は本の装幀や挿絵を中心としていて、たくさんのちいさな作品をみつめるように鑑賞した。和と洋の混淆した美は、西洋の文化を積極的にとりいれようとしていた大正時代ならでは。
個人的にとくに惹かれたのは水島爾保布で、谷崎潤一郎の幻想小説『人魚の嘆き』『魔術師』にビアズレー風の挿絵を描いていたのはこの方だったのだと、あらためて知った。『痴語』という著書の表紙が気に入って、調べてみたのだけど本の内容は不明である。阿修羅像のような艶かしいシルエットが、パイプと洋酒を嗜んでいて、聖俗を超えておりなんとも逸楽的。
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