海王星



雨の日に降りた地下は安堵が乳香になってくゆる
地表をうちつけているはずのあまたの雨粒 を倣って跫音をたてる通行人たち
たたんだ傘からしたたるあきらめのわるいしずく
案内板の矢印のさき ほんとうに往きたいところはみえない
どこへ往くともしれない人波の そのほんの一滴になって
海王星直通列車に乗る 轟轟としたノイズにのみこまれ
つながれたイヤホンから 母の声がきこえた気がした




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