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花時のゆめとうつつの渚かな
泣きはしないと思っていたのに、ラストシーンで嗚咽がもれてしまった。
観たひとがおのずから口を噤むのもわかる。
だからネタバレはしないけど、わずかな情報でさえも新鮮な感動を損なってしまうのではないかという危惧のあるため、これから観賞を予定している方が避けられるように、私なりの感想を語るまえに間をあける。
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シリーズに馴染みのない方には設定や物語が難解であることは致し方ない。しかし、そうした設定や物語はべつとしても、このアニメ映画はインパクトを引き起こしたであろうといえる。
虚構の本質は現実を相対化させることにあるのではないか、と、アニメそのもの、現実そのものが問い直されているように思えてならなかった。それはまさしく、演劇や映画の監督としての寺山修司の手法なのだ。
ネットとリアル、幻想と現実の境界があいまいになりつつあるいまこのときだからこそ、語られるべきこともある。それは私自身、創作の念頭においていることの一つでもある。
そのために、ラストシーンのすぐあとにながれた主題歌の歌詞もとても響きあっていると解釈できた。
初めてのルーブルは
なんてことなかったわ
私だけのモナリザ
もうとっくに出会ってたから
──宇多田ヒカル『One Last Kiss』
春遅し、遅れてきた春、それは観念上の春よりも、麗かだろうか。だが、春にはかわりない。
この現実、この社会、ときに生きづらさも感じるけど、それでもこの世は、Beatiful World なんだ。きっと、そうなんだよ。
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